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- 財務諸表ってなに?
- 決算書、有価証券報告書、計算書類とはなにが違うの?
本記事では、財務諸表とは何かについて説明します。
財務諸表は会計の世界では基本中の基本で、知らないと先に進めない知識です。
あわせて同じような概念である決算書、有価証券報告書、計算書類との違いを解説していきます。
初学者の方々にとって日々の勉強のお役に立てたら幸いです。
財務諸表とは
財務諸表を一言で表すなら「企業の成績表」です。
小学校の時もらっていた通信簿や通知表の企業版だと思ってもらえればOK。
通知表には1年間の学校での活動を、学業成績や生活態度などいろんな角度から評価されていましたよね。
企業も同じで、1年間の会社活動を世間からいろんな角度で評価されます。
もうかってる?お金はある?お金を何に使おうとしている?
その結果が財務諸表なのです。
財務諸表は主に4つの書類のこと
財務諸表は主に下記の4つの書類で構成されています。
財務諸表(Financial Statements) F/S
- 貸借対照表 (Balance Sheet) B/S
- 損益計算書 (Plofit & Loss statement) P/L
- キャッシュフロー計算書 C/S C/F
- 株主資本等変動計算書 (Statements of Shareholder’s equity) S/S
このうち、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書を財務三表と呼びます。
財務三表を見れば、企業の大まかな状態がわかります。
株主資本等変動計算書(S/S)を読むのは初学者には易しくないので、まずは企業の重要情報が詰まっている財務三表から読んでいきましょう。
それぞれの書類がどういった内容なのか説明していきます。
貸借対照表(B/S)とは
会社は何を持たずに経営することはできません。
一番分かりやすいのがお金ですね。現金がないと事業を行えません。
そのほかに持っているものといえば商品、商品を作る工場、工場を建てる土地、銀行からの借金…などが挙げられます。
これらは全て、貸借対照表(B/S)に記載されています。
貸借対照表(B/S)で会社の持ち物に関する情報がわかる
図のように100億円の資産、40億円の負債があったとします。
資産と負債の持ち主
先ほどの例で言うと、現金や商品、土地、工場は100億円の資産に含まれます。
資産の持ち主は会社です。
また、借金は負債に分類されます。
借りた40億円は返さなきゃいけないので、負債の持ち主はもともとの所有者(貸主)ですね。
100億円のうち40億円が負債のお金を返すための資産とすると、資産と負債の差額60億円のことを純資産と呼びます。
純資産の持ち主
会社は株主から投資を受けています。投資した会社が事業に成功すると、株主に配当が受け取れるという仕組みです。
では、配当はどこから出るかというと…純資産からです。もちろん全部株主に渡すわけではなくて、経営に影響をきたさない範囲で株主に還元されていきます。
つまり、純資産は株主の持ち物なんですね。
このように貸借対照表(B/S)はいろんな人の持ち物が合わさってできているんです。
実際の企業で貸借対照表(B/S)を確認!
実際の企業の書き振りを確認してみましょう。動画で紹介したのは日産自動車(株)の貸借対照表(B/S)です。下記リンクからどうぞ。該当箇所はP.62〜63。
着目すべきは、自動車メーカーだけあって機械及び運搬具などの設備(固定資産)を多く持っていること。
また、現金及び預金の残高の大きさや、長期借入金の増減額なども見逃せませんね。
損益計算書(P/L)とは
会社の目的を平たく言えば「儲けること」に尽きます。
損益計算書(P/L)で会社の儲けに関する情報がわかる
では「儲け」とはなんなのか、もう少し詳しく解説していきます。
まず、商品が売ったら会社に売上が入りますね。
でも、売る商品はタダではないので、仕入に費用がかかっています。
加えて、売ってくれた営業マンの給料や、事務所の家賃や水道光熱費といった諸経費にお金を支払います。
つまり、売上からかかった費用を差し引いて、残ったものが儲け(利益)となるわけです。
具体的には図の通り。売上100億円 ー 仕入30億円 ー 諸経費50億円 = 利益20億円となります。
損益計算書(P/L)を見ればいくら儲けがあるかわかるのです。
実際の企業で損益計算書(P/L)を確認!
それでは、日産自動車(株)の損益計算書(P/L)を確認してみましょう。下記リンクからどうぞ。該当箇所はP.64~65。
着目すべきは売上の規模感や、儲けを表す当期純利益をきちんと確保している黒字体質などですね。
キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書は、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)と比べると、あまりなじみのない資料かもしれません。
キャッシュフロー計算書で会社のお金の流れがわかる
初めは想像しづらいかも知れませんが、会社の中はボロボロで赤字を垂れ流していたとしても、100億円現金を増やすことが理論上可能なんです。
例えば、とある企業に100億円の現金があったとします。
1年後に見てみると200億円に増えていました。
もうかってそう!と思うかもしれませんね。
でも実はそこに落とし穴があります。
現金は借金で調達しても増えるんです。
正直、そんな会社に投資したくないですよね。
だからお金の流れを表したキャッシュフロー計算書を見ることが重要なのです。
キャッシュフロー計算書の構成
キャッシュフロー計算書は企業のお金の流れを3つの視点で明らかにしています。
- 営業活動に関わるキャッシュフロー
- 投資活動に関わるキャッシュフロー
- 財務活動に関わるキャッシュフロー
詳しく解説していきます。
営業活動に関わるキャッシュフロー
本業でどれだけお金を稼いだかが表されます。
ゴディバならお客さんにチョコレートを売った売上がここです。
投資活動に関わるキャッシュフロー
設備投資などにいくらお金を使ったかを表します。
チョコレートを作るための機械をいくら買ったのかがここです。
財務活動に関わるキャッシュフロー
借入や返済にいくらお金を使ったかを表します。
機械を買うためのお金の調達・返済がここです。
実際の企業でキャッシュフロー計算書を確認!
それでは、日産自動車(株)のキャッシュフロー計算書を見てみましょう。下記リンクからどうぞ。該当箇所はP.69~70。
3つの視点だけ見ればOKです。各活動のプラスマイナスをみると、営業活動がプラス、投資活動と財務活動がマイナスです。
つまり、本業で稼いだお金を設備投資や借入金の返済に回していることがわかりますね。
株主資本等変動計算書(S/S)とは
株主資本等変動計算書(S/S)は純資産がなんで増えたのか or 減ったのか、その原因を明らかにするものです。
株主資本等変動計算書(S/S)で株主の持ち物の流れに関する情報がわかる
例えば、貸借対照表(B/S)で純資産が5億円増えている理由は、株主資本等変動計算書(S/S)を見れば明らかになります。
株主から追加で投資を受けたからなのか、利益を稼いだからなのか、株主へ配当した分も含まれているのか(配当したら純資産は減ります)。
正直プロでも読むのが難しいです。
初学者は財務三表でなんとなくわかるので、そこから始めてみるといいかなと。
財務諸表は全部つながっている
財務諸表(3表+1)を紹介しましたが、それぞれ独立したものではありません。
ここからは財務諸表どうしのつながりを見ていきます。
貸借対照表(B/S)と株主資本等変動計算書(S/S)
貸借対照表(B/S)に表示されている純資産の部において、当年度の変動を詳しく説明したのが株主資本等変動計算書(S/S)です。
株主資本等変動計算書(S/S)と損益計算書(P/L)
株主資本等変動計算書(S/S)と損益計算書(P/L)は当期純利益の変動でリンクします。
当期純利益とは、売上から諸経費を引いて残った儲けのことです。
この儲けは純資産が増減する原因になり得るんですね。
また当然ながら、貸借対照表(B/S)と株主資本等変動計算書(S/S)はつながっているので、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)も間接的につながっています。
貸借対照表(B/S)とキャッシュフロー計算書
貸借対照表(B/S)とキャッシュフロー計算書は現金・預金の残高でリンクしています。
貸借対照表(B/S)に表示されている現金・預金の残高が増減した理由を、お金の動きを表すキャッシュフロー計算書が説明しているんですね。
こんな感じで、財務諸表それぞれが説明し足りない部分を、互いに補完しあって成り立っています。
財務諸表とよく似た書類【決算書、有価証券報告書、計算書類】
財務諸表とよく似た書類を紹介します。例えばこんな言葉、聞いたことありませんか?
- 決算書
- 有価証券報告書
- 計算書類
ここから先を読めば、どういう違いがあるか答えられるようになりますよ!
財務諸表と決算書
決算書=財務諸表という認識でOK。指している内容は同じです。
なにが違うかというと、口語なのか法律用語なのかというだけ。
決算書は口語、財務諸表は法律用語なんですね。
有価証券報告書と計算書類
似たような表現のなかから、有価証券報告書と計算書類について見ていきます。
これらは法律に基づく専門用語だということで共通しています。
では、違いは何かというと、どの法律に基づいているかです。
- 金融商品取引法…財務諸表(F/S)、有価証券報告書
- 会社法…計算書類
有価証券報告書
有価証券報告書は、上場企業が年に1回開示する義務があります。
企業内容が細かく記載されており、財務諸表(F/S)は有価証券報告書の一部に組み込まれています。
財務諸表(F/S)のほかにも事業の説明、取扱商品の紹介、会社の組織図、代表者の経歴、補足情報などが記載されています。
大企業になると何百ページといった量になります。
計算書類
上場していようがしていまいが、株式会社では年に一回、株主総会が行われます。
うまくいっている会社では比較的穏やかに進みますが、なかなか業績が上がらない会社だと取締役が糾弾されることもあります。
自分たちが投資したお金の行方ですから、株主のみなさんは本気になりますよね。
計算書類は召集通知に同封される
そういった株主総会を行う際には事前に招待状が届きます。
開催日時、集合場所などが書かれていて、専門用語で召集通知といいます。
召集通知に含まれている会社の業績・財務状況を表した資料を計算書類と呼ぶのです。
財務諸表と計算書類に含まれる資料
貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、株主資本等変動計算書(S/S)は共通で含まれています。
ただし、キャッシュフロー計算書は会社法の要請がないので、計算書類には含まれません。
他の相違点としては、計算書類には個別注記表が含まれています。数字だけでは表せない補足情報が記載された資料です。
実際の企業の有価証券報告書や計算書類を確認!
上場企業だとHPに公開されているので、簡単に見れます。
もちろん株主じゃなくてもOKです。
ただ、一回見てみればわかりますが、めちゃくちゃ難しい資料なので注意してくださいね。どうやったら読めるようになるかというと、もはや慣れしかないかなと。
私のチャンネルでも有価証券報告書の読み方を解説した動画がいくつかありますので、参考にどうぞ。最終的には自分の好きな企業の有価証券報告書が読めるようになるといいですよね。
ちなみに有価証券報告書の複雑さで有名なのはソフトバンクグループですよ。
⏬会計を楽しく学習されたい方は是非覗いてみてくれると嬉しいです♪
https://www.youtube.com/c/kuroi-cpa
本記事は以上です。お疲れ様でした。
公認会計士YouTuberくろいより